Monthly ESSAYS

『本のある時間』は、さまざまなジャンルの本との出会いを通して、本を読むことの楽しさ、大切さ、手に取ることの喜びを共有するネット広場です。
このコーナーでは当サイトの編集委員が、その専門の視点を踏まえた本にまつわるコラムを掲載しています。
皆様の本との新たな出会いに繋がれば幸いです。

ブック&カフェ、ときどきお酒

瀬戸 理恵子
PROFILE
THIS MONTH
Vol.27

図書館カフェの新たな一歩

BACKNUMBER
Vol.26

本と、お酒と、文士料理と

Vol.25

何処でも何時でもない異次元空間

Vol.24

もう一つの世界への入り口

Vol.23

アート本が並ぶリビングへ、ようこそ

Vol.22

ブルックリンの風を感じながら

Vol.21

心の故郷を探して

  • Vol.20

    美しき本の迷宮へ

  • Vol.19

    生活に寄り添うギャラリー&ブックカフェ

  • Vol.18

    書物の光を浴び、自らの心に問う

  • Vol.17

    時を経た本の佇まいに魅かれて

  • Vol.16

    未来のための“渋谷系ふるほんや”

  • Vol.15

    さあ、旅に出かけましょう

  • Vol.14

    生きることの本質を見つめる

  • Vol.13

    エキナカから「ニッポンの今」を発信

  • Vol.12

    インスピレーションに満ちた“図書室”

  • Vol.11

    文化の香りと、コーヒーの香りと

  • Vol.10

    日常から逃れ、忘れかけていた自分と出会う

  • Vol.8

    コーヒーも飲める、街角の“おいしい本屋さん”

  • Vol.8

    絵本作家が手掛ける、図書館のような絵本カフェ

  • Vol.7

    自分“らしく”、ゆるやかな時を過ごす

  • Vol.6

    昭和の長屋で、ほっこりと

  • Vol.5

    本を旅する、人を辿る

  • Vol.4

    洗練のライブラリー・ラウンジへ

  • Vol.3

    ジャズと珈琲と本

  • Vol.2

    太宰を想うブックカフェ

  • Vol.1

    ブックカフェへの誘(いざな)い

12/01/06 UP!

第27回 図書館カフェの新たな一歩

1908年、東京私立日比谷図書館として開館。戦災で焼失し、1957年に再建されて以来、三角形の建物が人々に親しまれています。

図書フロアの「世界のミステリー紀行」がテーマの特集棚(取材時)。「超常現象」、「悪魔と天使」、「厄年の方必見です」「魔法が使えたら」「マヤー!!」などバラエティ豊かな見出しに、思わず引き寄せられます。

1階奥にある「Library Shop & Cafe Hibiya」。販売されている本は購入後、席で読むことができます。

壁際には、10人の作家による「作家書店」がずらりと並びます。

「作家書店」の棚の上には、それぞれの店長=作家からのメッセージも。

カフェにはサンドイッチ約4種、ドリンク9種、スコーンなど菓子パン約6種のほか、世界各国の輸入菓子が揃います。

四季折々の景色が楽しめるカフェのテーブル席は、全16席。

サンドイッチのパンには、グラハムローフまたはセサミローフを使用し、ヘルシーに。写真は、コショウがぴりりと効いた「パストラミチーズ」(320円)と、「ブレンドコーヒー」300円。

地下1階の「Library Dining Hibiya」は、本棚をインテリアに用いたシックな装い。

「日比谷図書文化館」図書フロア企画担当の樋口万季さんが図書フロアから選んだ、カフェとダイニングで読むのにおすすめの3冊。左は、日比谷の帝国ホテルを建築したことで知られるフランク・ロイド・ライトの思想に触れる、フランク・ロイド・ライト著『有機的建築―オーガニックアーキテクチャー』(2009年、筑摩書房)。右は、文明開化を象徴する近代建築の魅力を紹介する、佐藤啓子著『赤レンガ近代建築―歴史を彩ったレンガに出会う旅』(2009年、青幻舎)。手前は、懐かしい温もりと新しさを併せ持つ活版印刷の秀作を集めた、シャーロット リバース著『世界の活版印刷グラフィック・コレクション』(グラフィック社、2010年)。「その他、日比谷公園を舞台に男と女を描いた芥川賞受賞作、吉田修一著『パーク・ライフ』(2002年、文藝春秋)もいいですね」と、樋口さん。

複合的な知の拠点

あなたが本当にそうだと信じることは、常に起こります。そして、信念がそれを起こさせるのです。

―フランク・ロイド・ライト

 緑豊かな都会のオアシス、日比谷公園に建つ三角形の図書館として親しまれてきた、都立日比谷図書館。2011年11月、千代田区立日比谷図書文化館としてリニューアルオープンし、図書館機能、ミュージアム機能、文化活動・文化交流機能を併せ持つ「知の拠点」というコンセプトのもと、これまでにない図書館のあり方を提示しています。
 書籍から雑誌、新聞、パンフレットまで約15万冊を収蔵するという図書フロアは、広い窓の先に公園の緑が広がり、明るく、堅苦しさを感じさせない雰囲気。老若男女が思い思いの場所でゆったりくつろぎ、場所柄、仕事の合間に訪れるサラリーマンの姿も多く見られます。書棚に目をやれば、「江戸・東京」「女子力アップ」「科学」「もしも東京出身のサラリーマンが東北で農業をはじめたら?」「日比谷1957〜社会・産業・ファッション」(すべて取材時。内容は移り変わります)など、個性的なテーマに沿って本を集めた特集棚がフロアのあちらこちらに。従来の型にはまった分類保管の枠を超え、関連する書籍をゆるやかな線で繋いで見せることで思考のヒントを与え、自然に興味を広げる仕掛けがなされています。
 このほか、館内には貴重な書籍を実際に手にとって閲覧できる特別研究室や、江戸・東京をテーマとして千代田区の歴史を紹介する常設展示室、企画展を展開する特別展示室、さまざまなイベントや講座が開催されるホールとセミナールームも完備され、学びや情報交換の貴重な場として、広く活用されています。

15万冊を自由に読める“究極のブックカフェ”

 特に注目したいのが、1階に設けられた「Library Shop & Cafe Hibiya(ライブラリー・ショップ・アンド・カフェ・日比谷)」と、地下1階の「Library Dining Hibiya(ライブラリー・ダイニング・日比谷)」です。両店ともなんと、図書フロアの書籍がごく一部を除いてすべて持ち込み可能! カウンターでわざわざ貸出手続きをすることもなく、約15万冊の本を自由に書棚から持ち出して食事や飲み物を楽しみながら読めるとは、まさに、“究極のブックカフェ”と言って過言ではありません。既成概念を打ち破り、新たな図書館のあり方を推進する日比谷図書文化館の姿勢が、ここにも表れています。
 1階の「Library Shop & Cafe Hibiya」は、円形のモダンな造りが印象的。コーヒーや紅茶、ジュース、サンドイッチ、アップルパイのほか、洒落たパッケージが目を引く世界各国の輸入菓子が気軽に楽しめます。そして、店内中心部と壁面の販売用の書棚では、ショップを担当する丸善書店のベテランスタッフによって厳選された、2000冊以上の本を販売。常設展示と連動した、江戸から東京への移り変わりを時代でたどる書籍が中央の円柱の周りに並べられ、歴史、地理、美術、写真、映画、コーヒー、紅茶、図書館、読書などに関する魅力的な書籍が、その外側を取り囲んでいます。
 ユニークなのは、小説家、詩人、学者、漫画家など、1人の作家が店長となって1つの本棚で書店を展開する、「作家書店」と名付けられた書棚です。「ジュンク堂」池袋本店の名物企画が場所を変えて再現され、こちらもすべて購入可能。取材時は、谷川俊太郎さん、養老孟司さん、福岡伸一さん、佐藤優さん、萩尾望都さん、いがらしみきおさん、伊坂幸太郎さん、瀬名秀明さん、椎名誠さん、日野原重明さんの10人の書棚が壁際に並び、来訪者の熱い視線を集めていました。それぞれの棚に各人の個性を感じながら、自分も読んだ懐かしい本を好きな作家の“書店”に見つけて喜んだり、意外な選書に驚いたり。眺めているだけでも読書の楽しみが広がる企画となっています。
 また、本に混じって販売されている、「読書にまつわるもの」がキーワードのセンスあふれる文房具や、江戸切子、指物、漆器、人形といった工芸品も必見。「特に人形は、江戸・明治から続くデザインを忠実に再現しており、職人さんもいまでは1人しかいないというような貴重なものです。江戸・東京の本当のよいもの、そして珍しいものを見ていただきたい」と、ショップ担当の〆野紗希さんは話します。
 一方、地下1階にある「Library Dining Hibiya」は、洋書の並ぶ本棚をインテリアとした、落ち着いた雰囲気。日比谷という土地に因み、「特製ハヤシライス」や「オムハヤシライス」、「ビーフシチュー」など、懐かしい香りの漂う日本の洋食が10種余り揃えられ、デザートやワイン、ビールとともに夜9時まで味わえます。もちろんお供は、図書フロアから選んだとっておきの本たち。カフェとはまた趣の異なる、大人ならではのゆとりの時間が待ち受けています。
 ただひたすら本と向き合うだけではなく、飲み物や料理を味わいながら肩の力を抜いて本を楽しみ、知的好奇心を大いに刺激される至福を与えてくれる、“進化系”図書館のカフェとダイニング。都会のオアシスに現れた、これまでにはない新しいスタイルの「本のある時間」に、ゆったり身を委ねてみてはいかがでしょうか。

Library Shop & Cafe Hibiya(1F)
11:00〜19:00(土曜、日曜、祝日〜17:00)

Library Dining Hibiya(B1F)
11:00〜21:00(土曜〜19:00、日曜10:00〜17:00)

東京都千代田区日比谷公園1-4 千代田区立日比谷図書文化館内
毎週第3月曜、年末年始休

http://hibiyal.jp/

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