
『本のある時間』は、さまざまなジャンルの本との出会いを通して、本を読むことの楽しさ、大切さ、手に取ることの喜びを共有するネット広場です。
このコーナーでは当サイトの編集委員が、その専門の視点を踏まえた本にまつわるコラムを掲載しています。
皆様の本との新たな出会いに繋がれば幸いです。

12/01/20 UP!
いよいよ映画_The Hobbit Un Expected Party_が来年公開されるのが身近に感じられるようになった。前回の記事ではそんな動きに敏感になった仲間達と一歩、歩き始めたことをご紹介した。同じ価値観を持つ者が集まり、新たな目標が設定できると新しいプロジェクトが生まれる。仲間が集まるところまでが面白いという側面もある。一方で、実はそこから様々な課題が出現し、それを乗り越えながら、また新たな価値が生まれてくる。しかしそんな体験が得られるには、記録を残すことから始めなくてはならないと思う。実は現在あるSNS内で参加者の考えている事、実施した事、希望している事等をまとめるようにしながら動き出した。さて、どんな事が生まれてくるのか楽しみだ。
ちなみに前回集まった時には、慶應義塾大学の辺見葉子先生に素敵な本のご紹介を受けたのだが、なんと作者のサイン本入り初版。マニアからすると、うらやましいの一言!
この本はトールキンが妖精物語をどのように考えていたのか、そして芸術活動とはどんな作業になっていくのか、そんな思索の軌跡が説かれている。彼の描こうとしてしていた世界を理解する為には必読の本と言っても良いだろう。個人で何の利害関係もなく神話を生み出すことになっていくトールキンの芸術活動の源泉をかいま見ることができるかもしれない。何度も読んでみたくなる本のひとつだ。
さらに、この時参加された木村京子氏からは、マーク・チャドボーン、木村京子訳、_フェアリー・フェラーの神技_、バベル・プレス、2004.の紹介を受けた。
辺見葉子氏の解説入りの_ミッドサマー・イヴ 夏の夜の妖精たち_、河出書房新社、2006.にも取り扱われている、ラファエル前派の画家リチャード・ダットの作品をテーマに展開するストーリー。一気に読んでしまったが、またロンドンのテート美術館に行ってみたくなった。この絵を通してダットが何を考えていたのだろうか。父親殺しをしてしまった事実とその後の彼の未完成の作品に対峙していた時の思索とは一体どんなものだったのだろうか。本人は当時考えていなかったかもしれないが、現代の私達にこの絵が何を伝えるメディアになっているのか、その秘密に近づきたくなる読後感を得た。行動を起こしたくなる秘密を持った絵といったところか。異界と外界との接点を探す為の彼にとっての曼荼羅だったのかもしれないと感じさせてくれる。
また本が人との繋がりを提供してくれた、楽しいひと時だった。
人は一生学び続けるものなのだろうか。本がくれた人との繋がりを通じて、その時どんな学習をしてきたかを綴ろうとしてきた「本のある時間」でのブログも今回が最後ということになった。種々雑多なとりとめのない記事になってしまったかもしれないが、その時々にどんな刺激が私の中に伝わり、どんな反応を起こして、何を調べて、誰と会って、その間を本がどのように繋いで行ったか、少しでも記録ができたのではないかと思う。関係各位に感謝を申し上げたい。
人そして本がメディアとして作用した時の記録を少しでも残せたのではないかと。実はこうした活動を現在学習環境を提供している大学、学校や塾、専門学校、生涯教育の現場でも展開してくれたら面白いことが起きるのではないかと考えて来た。記録があってこそ、改善が生まれるというのは社会に出ると良くわかることだ。記録を分析し、さらによりよい学習環境を構築すること、そんな姿勢が現在の学習環境にあったら、未来の日本にも新しいサービスが誕生し、明るい兆しが見えてくるのではないだろうか?海外の検索エンジンに頼り切りになるのではなく、各学習環境が検索エンジンになり、独自のデータベースを保有し、個性ある改善を起こしてこそ、学習環境に従事すべきスタッフのやりがいも生まれ来るのだろう。
図書館が行うべき、教員が各授業で行うべきという議論ではなく、学習環境の組織全体で実施すべき大きなプロジェクトなのだと思う。学習ポートフォリオを学習環境は構築すべきだという主張もあるが、最終ポートフォリオを作り込む事に意義があるのではなく、日々の記録をどのように取って行ったら良いのかという議論がまず生まれるべきだろう。
学習者がどのように学習をして成長していったのか、記録を残せるのはどんな機関なのだろうか?さらにその組織の改善を実施することのできる学習環境はどこが主導すべきなのだろう?国がやるにせよ、自治体がやるにせよ、私的機関がやるにせよ、価値観を共有した人が喜んで集まり、記録を残してくれる環境を残すところを私達は求めているのではないだるか?
ちいさい動きながらも少しずつそんな主張を、様々な学習環境に従事する人達と一緒に作り込んで行く、そんな活動を今後も続けて行きたいと思ってる。今後ともご支援よろしくお願いいたします。またどこかで皆様とお会いできる事を。