
『本のある時間』は、さまざまなジャンルの本との出会いを通して、本を読むことの楽しさ、大切さ、手に取ることの喜びを共有するネット広場です。
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12/01/13 UP!
2012年1月6日。東北は宮城県の名取市で一つの図書館が誕生した。名前は、名取市図書館どんぐり子ども図書室。本連載の最終回となる今回は、この図書館の誕生を伝えよう。

名取市は、仙台市の南部に位置し、2011年3月11日の東日本大震災では、津波によって、沿岸部の閖上(ゆりあげ)地区が壊滅的な被害を受けた街だ。しかし、震災による被害は津波によるものだけではない。見過ごされがちだが、大きく長かった揺れは、建物や道路にも甚大な被害をもたらした。ここ名取市でも、名取市図書館の建物が「使用禁止」になるほど、大きな被害を受けている。


建物は元々市役所として使われていたもので、築年数も50年を超えており、3月11日の揺れと、さらに4月7日に起きた大きな余震には、さすがに耐えられなかったのだろう。この結果、震災当初、名取市は図書館サービスが提供できない事態に陥ってしまったのである。しかし、4月にはかねてより親交のあった北海道の石狩市民図書館を中心に関係者が3週間に渡って支援に駆けつけたことで、5月には隣接する書庫と移動図書館1台を使ってのサービスが再開された(その後、移動図書館車1台と図書館振興財団の寄付によるプレハブの南館が追加されている)。

これ自体は素晴らしいいことなのだが、やはり、書庫、移動図書館車2台、プレハブ1棟だけでは、限界がある。落ち着いて資料を選ぶこともできず、ましてや図書館での調べ物ができるはずもない。このような状況を受けて動いたのが、宮城県図書館である。宮城県図書館自身も大きな被害を受けながらも、県立の図書館として市町村の図書館支援にあたったのだ。宮城県図書館のスタッフたちの尽力の結果、宮城県内を中心に支援活動にあたるRQ市民災害救援センターから元国連大使の高須幸雄さんを紹介され、さらに高須さんから日本ユニセフ協会を紹介された。このままの状態が続けば、真冬の厳寒の中、屋外で子どもが寒風や風雪にさらされることを重く見た日本ユニセフ協会は約3000万円を新しい図書館の建設費用として提供する旨を申し出てくれたのだ。
筆者も関わるsaveMLAKの仲介で複数の事業者を検討した結果、すでに岩手県大船渡市や宮城県石巻市で公民館や集会所の建設実績のある東海大学チャレンジセンターの震災復興応急住宅モデル「どんぐりハウス」が選ばれた。施工業者の方々の献身的な取り組みのおかげで、着工は11月の下旬、竣工は12月下旬という驚異的なスピードで建設が進められた。
東海大学工学部建築学科の杉本洋文教授が考案した「どんぐりハウス」は、岐阜県産のヒノキの間伐材を利用しており、山火事等によって森林が喪失しても芽を出し、森林を再生させる力を持つ「どんぐり」にちなんで名づけられている。再生を図るいまの名取市図書館には、最適の名前だろう。そして、本棚には、宮城県産の木材を使った「組手什」(くでじゅう)を採用し、こちらも大きな被害があった宮城県登米市の登米町森林組合に製作していただいた。かくして出来上がったのが、名取市図書館どんぐり子ども図書室である。


開館前々日と前日の1月4日、5日には、saveMLAKの有志や宮城大学、東海大学、そして宮城県図書館のスタッフも加わり、従来の建物からの資料の移動が一斉に行われた。絵本や児童書を中心に子連れの家族向けにと選ばれた旅行や医療・健康に関する一般書等、約2万点の資料が、どんぐり子ども図書室に収められ、いよいよ図書室としての体裁を整え、「あとは利用者が入れば完成」(杉本教授)という状態にまでこぎつけたのである。


いよいよ開館となった1月6日は10時からオープニングセレモニーが開催され、10時30分の開館を待つ市民の方々が長い行列をつくるまでになった。そして、「どんぐり子ども図書室」の鍵が名取市長へと寄贈され、テープカットを経てついに開館。決して狭くない、むしろ子ども図書室としては相当の広い約140平米の免責を持つ館内は、あっという間に満員になり、入館町の行列までできたのだった。

