図書館を読もう!〜小説・漫画・映画の中の図書館〜

埜納 タオ『夜明けの図書館』 −レファレンスって、こういうことです。

「本のある時間」を読んでいるあなたは、ただの本好きではなく、
本屋さんや図書館も大好きなのではないかと思います。
雑誌の本屋さん特集を見るとつい手がのび、新しい本屋さんができたらのぞきに行き、
旅先で図書館を見つけるとふらりと入ってしまう……
そうした習性の一つに、「小説や漫画などで、本屋さんや図書館が出てくるとわくわくする」というのはないでしょうか?
このコラムでは、主に図書館が出てくる小説や漫画、通称「図書館小説」「図書館漫画」などを紹介していきます。
作品を紹介するだけではなく、図書館の役割、どのように思われているか、などなどを考えていけたらと思います。

埜納 タオ『夜明けの図書館』

3年間の就職浪人を経て「暁月市立図書館」で司書人生をスタートさせた葵ひなこが,先輩の力を借りながら利用者からのレファレンスに答えていき、成長していくさまを描いた漫画です。

レファレンスサービスを簡単に説明するとしたら、どう言えばよいでしょうか。
「調べものの手伝い」「調査相談」「相談サービス」などなどいろいろな言い方がありますが、これからは「『夜明けの図書館』を読んでみてください!」という言い方ができるようになりました。

レファレンスサービスは、図書館の重要な業務とされながらも、一般の利用者の認知度はそれほど高くないようです。
最近では「インターネットがあるんだから、レファレンスなんてもういらない」などと言う人もいます。
本書でも、レファレンスは過剰なサービスだと主張する登場人物が出てきます。
しかし、「誰でも調べられる」からといって、「誰でも答えを見つけられる」というわけではありません。
情報が多くなったことで、「答えを見つける」のが、むしろ難しくなったともいえます。
答えを見つけられないときに、図書館が手助けをするのが、レファレンスサービスです。
「レファレンスサービス」と銘打っていなくても、どこの図書館でも行っていることでしょう。
この漫画でも、利用者は「レファレンスサービスを利用しよう」と思ってひなこに相談してくるわけではありません。
知りたいことがあって、図書館に来たものの、よくわからなくて、つい助けを求める。
ひなこをはじめとした司書が応える。
利用者が、知りたい情報に到達できる。
利用者にレファレンスサービスという言葉をアピールしなくとも、「図書館の人が助けてくれた」と思ってもらえるだけで、役割を果たしたといえるでしょう。
実際の司書のみなさんは「こんなに都合よくいかないよ」と思うかもしれませんが、図書館の重要な役割を知るには、大変よい入門書です。

国立国会図書館が発行する「カレントアウェアネス-E」に、作者へのインタビュー記事が載っています。
それによると、作者は、この漫画を描くまで、レファレンスサービスについての知識が全くなかったとのことです。
全然知らないところから、取材を通してレファレンスに限らず図書館のいろいろな業務に興味を持つようになり、図書館に対するイメージが変わっていったと。
「夜明けの図書館」の読者も、作者と同じ道をたどってほしいと思いますし、そうさせる面白さがこの本にはあります。
周りに、「図書館の仕事ってなんなの?」と言っている人がいたら、ぜひ読んでもらいましょう。
図書館でも、カウンターの脇などに置いて利用者に読んでもらい、「図書館は本を借りるだけの場所じゃないんだよ」ということを積極的にアピールしてほしいものです。

というように、「図書館の業務についてあまり詳しくない」人に特に読んでもらいたい漫画なのですが、もちろん図書館好きにとっても楽しい本です。
司書のみなさんは、そもそも「調べるのが好きである」「わからないことがあるとつい調べてしまう」という人が多いのではないでしょうか。
この漫画の登場人物にも、「調べもの好き」がにじみ出ています。
彼らを見ていると「自分もレファレンスがしたい」とうずうずしてしまうはずです。

レファレンスに関する小説としては、門井慶喜の『おさがしの本は』という本もあります。
この小説は、ミステリー仕立てでレファレンスを扱いながら、「図書館の意義」などについても考えさせる本になっています。
「夜明けの図書館」が面白かったという人は「おさがしの本は」も読んでみてください。
ますますレファレンスをしたくなることうけあいです。



書籍イメージ

出版社:双葉社
価 格:650円

購入する

プロフィール

イラスト

ペンネーム:今川久古(いまがわ きゅうこ)

1978年東京生まれ。
小学校1年で「図書館の人になりたい」と初めて思う。
東京大学文学部卒業後、某大きな図書館に勤務。
図書館人としての自分を磨きつつ、作家にもなりたい。

Twitter